介護にかかるお金
介護費・医療費を軽減する制度編
介護費や医療費の負担額が高額になった場合に、上限額を超えた分の金額が戻り、負担を軽減する制度があります。
今回は、その制度について解説します。
確定申告での医療費控除
確定申告の際に、1年間にかかった医療費が一定の額を超えたときに受けられる所得控除が「医療費控除」です。介護保険の介護サービス費には「医療費控除」の対象になるものがあり、原則として医師の指示書のもと受けている医療系の介護サービスが該当します。また、医療系の介護サービスを利用している場合に、併せて利用している福祉系の介護サービスの費用も「医療費控除」の対象になります。いずれも原則として保険給付の自己負担額が対象金額です。
「医療費控除」の対象となる医療系の介護サービス
要支援1・2
介護予防訪問看護
介護予防訪問リハビリテーション
介護予防居宅療養管理指導
介護予防通所リハビリテーション
介護予防短期入所療養介護(ショートステイ)
要介護1~5
訪問看護
訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導
通所リハビリテーション
短期入所療養介護(ショートステイ)
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護を利用したとき)
看護小規模多機能型居宅介護(医療系の居宅サービスを含む組み合わせで提供されたもの)
施設サービス(居住費・食費含む。介護老人福祉施設のみ自己負担額の2分の1に相当する金額)
上記の医療系の介護サービスと併せて利用した福祉系の介護サービス
要支援1・2
介護予防訪問入浴介護
介護予防認知症対応型通所介護
介護予防小規模多機能型居宅介護
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
介護予防・日常生活支援総合事業の訪問系サービス(生活援助中心は除く)
介護予防・日常生活支援総合事業の通所系サービス(生活援助中心は除く)
要介護1~5
訪問介護(生活援助中心は除く)
夜間対応型訪問介護
訪問入浴介護
通所介護(デイサービス)
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
短期入所生活介護(ショートステイ)
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護を利用しないとき)
看護小規模多機能型居宅介護(医療系居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの)
介護福祉士等による喀痰吸引等
医療費控除の対象になるおむつ代
医師の治療を受けていて、おおむね6カ月以上寝たきりであり、おむつを使う必要があると認められる人のおむつ代は、医療費控除の対象になります。医療費控除を受けるためには、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要な場合があります(病院により発行に手数料がかかることもあります)。2年目以降もおむつ代を医療費控除の対象にしたい場合は、要介護認定を受けている一定の人であれば、「おむつ使用証明書」の代わりに市区町村等が「おむつ使用の確認書」が申請により交付されます。
医療費と介護費の自己負担額の軽減制度
1カ月にかかった医療費が自己負担限度額を超えたときに、後から払い戻される制度があります。これを「高額療養費制度」といいます。介護保険サービス費の自己負担額についても同様の払い戻し制度があり、これを「高額介護サービス費制度」といいます。また、1年間にかかった医療費及び介護費、それぞれの自己負担額を合計した額が、一定の上限を超えた場合に払い戻しされる「高額医療合算介護サービス費」及び「高額介護合算療養費」制度があります。
高額療養費の基準(70歳以上の場合)
所得区分 | 自己負担の上限(月額) | 外来のみ(個人ごと) |
---|---|---|
現役並み所得者 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
一般 | 44,400円 | 12,000円 |
住民税非課税の人Ⅱ(Ⅰ以外の人) | 24,600円 | 8,000円 |
住民税非課税の人Ⅰ(年金収入のみで総所得金額がゼロの人) | 15,000円 | 8,000円 |
*条件によっては「世帯合算」や「多数回該当」など、さらに自己負担額が軽減されるしくみもあります。
高額介護サービス費の基準
所得区分 | 自己負担の上限(月額) |
---|---|
現役並み所得者に相当する人がいる世帯 | 44,400円(世帯) |
世帯内に住民税の課税者がいる世帯 | 37,200円(世帯) |
世帯全員の住民税が非課税の世帯 | 24,600円(世帯) |
住民税世帯全員の住民税が非課税の世帯のうち、次のいずれかに該当する場合 ・老齢福祉年金を受給している人 ・前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の方など |
24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
*(世帯)は介護サービスを利用した人全員の自己負担の合計額の上限。(個人)は介護サービスを利用した本人の自己負担額の上限。
高額医療合算介護サービス費・高額介護合算療養費の基準(70歳以上の場合)
所得区分 | 自己負担の上限(1年間) |
---|---|
現役並み所得者 | 670,000円 |
一般 | 560,000円 |
住民税非課税の人 | 310,000円 |
住民税非課税で所得が一定基準以下の人 | 190,000円 |
*上限を超えた額は介護保険と医療保険で按分。介護保険からの払い戻しが「高額医療合算介護サービス費」、医療保険からの払い戻しが「高額介護合算療養費」