「認知症とは?」

今や4人に1人が65歳以上のお年寄りといわれる超高齢社会。
なかでも認知症を抱えるお年寄りと、その介護に当たるご家族の負担が大きな社会問題になっています。「認知症」とはどういった症状をいうのか、改めて見直していきたいと思います。

認知症にも種類があることをご存知ですか?

認知症といえば「アルツハイマー」という言葉を思い浮かべますが、実は認知症にもいろいろな種類があります。もっとも多く見られる「アルツハイマー型」と「脳血管性」について解説します。

アルツハイマー型認知症

脳細胞が次第に萎縮していき、知能、身体全体の機能が衰えてしまう病気で、いまだその原因は解明されていません。70歳前後の女性に多く、比較的初期の段階から記銘力、記憶力の低下が見られるほか、人格にも障害が現れるため、周囲の人から気づかれるケースが多いのが特徴です。症状は固定的ながら、確実に進行していきます。

脳血管性認知症

脳出血や脳梗塞など、脳の血管の病気により脳細胞がダメージを受けることで起こる認知症全体をいいます。
55~65歳の男性に多いと言われ、細い血管が繰り返し詰まってしまう多発性微小脳梗塞が原因であることがほとんど。血管が詰まるたびに段階的に症状が悪化していくのが特徴です。

認知症にも見られる主な障害「記憶障害」と「見当識障害」

人は誰でも年をとると、新しいことを記憶する能力「記憶力」が衰えます。ですから、これだけでは「認知症」と判断することはできません。
「記憶障害」に加え、判断力、理解力、計算力、見当識、言語能力などの多くの障害を伴ってはじめて「認知症」であると判断できます。これを、いわゆる「認知障害」と呼びます。なかでも見当識が失われる「見当識障害」が起こると、時間や場所の認識ができなくなり、自宅にいるのに「家に帰る」と言ったり、夜中に外出しようとしたり、ご家族の顔がわからなくなるなど、いわゆる認知症が顕著になります。

老人性の物忘れと認知症の違い

老人性の物忘れ 認知症
生理的で加齢によるもの 病的で痴呆性疾患が見られる
物忘れを自覚し、探し物も努力して見つけようとする 物忘れの自責に乏しく、探し物が見つからないと誰かが盗ったなどと言うこともある
時間・場所などの見当識障害はない 時間・場所などの見当識障害が見られる
学習能力がある 学習能力に障害が見られる
作り話は見られない しばしば作り話をする
日常生活にほぼ支障はない 日常生活に支障がある
極めて徐々にしか進行しない 進行が早い

認知症による障害が原因で起こるさまざまな症状

●徘徊

初期においては、目的を持って外出したものの見当識障害により帰れなくなるケースが多く見られ、症状が進行すると無目的にただ歩き回るといった状態になります。

●せん妄

意識レベルが低下すること。寝ている状態と起きている状態の間のような状態で、幻覚を見たり興奮状態になったりします。

●物盗られ妄想

自分が物忘れをしてしまっているという事実を理解できないために、探し物が見つからないと「誰かが盗んだ」と思い込んでしまいます。介護者が「一緒に探しましょう」と協力してあげるとよいでしょう。

●不潔行為

いくつかのパターンがあるものの、排泄物を始末しようとしたができないため、行き当たりばったりの行動をして不潔行動とみなされるケースが多いようです。このような場合はまず、自分でやろうとした努力を認めてあげることが大切です。

介護をする上で心がけたいこと

●言動を受け入れ,理解する

記憶障害でしばしば同じことを繰り返し聞いたりすることがあります。ご本人は本当に忘れてしまっているので、その言動を根気よく受け入れてあげることが大切です。

●症状の段階を知り,ペースを合わせる

認知症の専門医師に症状をきっちり診断してもらい、何ができて何ができないのかを正確に把握することが重要。その上で、相手のペースに合った介護を行いましょう。

●よい刺激を与えること

外部からの刺激が極端に減少すると、脳の機能はますます低下します。挨拶や世間話など、相手にとって、心地よい刺激を与えてあげることが大切です。

●お年寄りの今を大切にする

お年寄りの長い経験の積み重ねが、認知症における行動や考え方にも大きな影響を与えます。それまでの価値観やライフスタイルを尊重した介護を行いましょう。